PEUGEOT 106RALLYE
1995.7.30 国道19号 道の駅大桑
名古屋のお店で買って乗って帰る途中。横のスターレットの助手席で(や)が寝てる

入動
 シンプルで洒落た競技ベース車両というキャラクターと、内装デザイン、特に色遣いに惹かれて購入。


【名古屋まで取りに行く】
 1995年当時、106ラリーを扱っていたお店は数軒あった。
 その中で一番安かった(予備検査渡しで169万円)名古屋のオートリーゼンで買うことにした。

 当時、福島に住んでいた(や)が付き合ってくれるというので、EP82スターレット(や)号で名古屋まで取りに行った。
 深夜1時ころ、(や)に青森まで迎えに来てもらい、その日の19時頃に名古屋に到着。
(途中、私が運転中に白バイに捕まって赤切符を切られたりしたけど、その辺のハナシは省略)

 で、いよいよオートリーゼンでで106ラリーを受け取って、札幌に向かって走り出すと・・・
 あれれ?遅い!?
 さっきまで乗ってたスターレットより明らかに遅い。
 新車慣らし中のため3000rpmリミットで走ってるから高回転域は分からないけど、低速トルクが全然ない。
 ストップ&ゴーを繰り返す市街地ではとてもスターレットについて行けんゾ!というか、3000rpmリミットでは街中の普通の流れに乗るのもつらい。う〜む。
 一方、乗り心地はとても良い。堅牢なボディーの下でサスペンションが綺麗に動いている感じ。これは気持ちが良い。

 なんとか名古屋市街を抜けて国道19号を東へ向かい、道の駅大桑で仮眠(上はその時の写真)

 次の日は(や)が選定してくれた慣らしを兼ねた帰りのルートを2台で走る。
 国道299号麦草峠から始まって、碓氷峠に金精峠、いろは坂・・と、峠道ばかりをつなげて福島に向かう、全く慣らしになってないルート。峠道では街中以上にスターレットについて行けなかった。(や)もこちらに合わせて2500rpm自主リミッターで走っていたようだが、とにかく106ラリーとスターレットでは低速トルクの太さが全く違うのでどんどん離されていく。

 福島到着は深夜だったので、(や)の寮に泊めてもらい、次の日はひとりで東北をひたすら北上。
 札幌到着は翌日朝7時。そのまま顔を洗って、着替えて地下鉄に乗って出勤した。


【仕様】
○色は赤!
 雑誌等で紹介される106ラリーは白しかなかったので、カタログを見て初めて白、赤、黒があることを知った。(ちなみにカタログの表紙の写真は赤)
 写真で白ばかり見てたので、赤がとても新鮮に見えた。
 ドア内側の鉄板むき出し部分と、カーペットとシートベルトの色が赤で揃うという点も気に入ったので、迷わず赤に決めた。

○エアコン無し
 この手の並行輸入車に日本で装着するエアコンは、値段は高いし、いかにも後付けって感じで不恰好なので付けなかった。
 それに、軽さとシンプルさが「売り」のこのクルマのキャラクターにも合わないと思う。

○パワステ付き
 106ラリーはパワステ有り、無し両方あったが、オートリーゼンではパワステ付きしか扱っていなかった。
 当時はパワステ無しの車なんて考えられないと思ってたので、全然気にしなかった。
 今は考え方が反対になって、1t以下の車なら迷わずパワステ無しを選ぶ。

○サンルーフ無し
 私は昔からサンルーフを好まない。(これは今も変わっていない)


【インプレッション】
 どうしても、ほぼ同じスペックのEP82スターレット(もちろんターボじゃくNA)との比較になる。
 動力性能はスターレットの方が完全に上。
 上にも書いたように、低速トルクが全くない。
 慣らしを終えて、レブリミットまで回してみると、ピークパワーはスターレットと同じ位はある・・・というより同じくらいしかない。このエンジンは低速トルクを捨てた代わりに一体何を得たのだろう?
 2台のトルクカーブを重ねると、スターレットより106ラリーが上に出る領域は多分無いと思う。
 私は遠出した先で、知らない峠道を走るのが大好きなんだけど、そういう場面ではこのトルク特性はすごく不利。
 さらに、頻繁なギアシフトを要求するエンジンにもかかわらず、ペダル配置はとてもヒール&トゥがし辛い。
 燃費は良好で、郊外をおとなしく走ると17q/Lくらい。

 もうひとつ、このクルマでどうしても納得できなかったのは、リアのきまぐれな挙動。
 アクセルを戻した時、洗濯板状に波打っているところを通過したときなど、相当唐突にオーバーステアになる。これは怖いゾ!
 原因はタイヤを外してリアサスペンションを観察するとすぐに分かる。
 トレーリングアームの軸側のスパンが短すぎて(ほとんどIアーム)、トー及びキャンバー方向のアライメント保持の剛性が全く期待できない構造になっている。
 理由は荷室スペースの確保のためだろう。
 しかし、荷物を全く積まない私にとっては、フラットで広いラゲッジスペースは意味が無い。それより、むやみにケツが出ないようにして欲しいんだよなぁ。

 乗り心地は、新車から30000qくらいまでは、上に書いたようにとても気持ち良かった・・・が、段々と、明らかに乗り心地が悪化してきた。
 マンホールや橋のジョイントを通過したときに、新車に近い頃は「タンッタンッ!」って感じだったのが、「ビリッビリッ」という感じに変化してきた。
 タイヤを新品にしても、ダンパーとストラットアッパーマウントを新品にしてみても改善されなかった。
 まぁ、ボディーの劣化ってことになるんだろうけど、なんだか腑に落ちない。
 一度もぶつけていないし、ダートは工事区間くらいしか走ってないし、下回りを含めて錆も全然ないのに、スチールのボディーってそんなに劣化するものなんだろうか。
 家で鉄工所を経営している(や)は、事故(塑性変形)、錆、熱(溶接など)などを受けない限り、鉄そのものはそう簡単に劣化しないという。
 これについては、まだ結論が出ていないが、やはりゴム部品が疑わしいと思う。
 サスアームのブッシュ、サブフレームの結合部など色々なところに使われているゴムを総交換するとどうだろうか?
 ただこれは部品代は安いけど相当手間のかかる作業なので、よっぽど思い入れがあるクルマじゃないと、なかなか出来ないだろうなぁ。

【トラブル】
70000qほど乗ったが、故障はほとんど無かった。
強いて言えば
・油温計の不調
 これは割と早い時期から発生。106の定番トラブルらしい。修理しなかった。
・スタビリンクのコトコト音
 スタビリンク先端のブッシュが犯人だと突き止めるまでは時間がかかった。スタビリンクを新品に交換して完治。(結構高かった。15000円くらい)
・2速のシンクロ
 50000q位から、ミッションが冷えているとき、2速にシフトするとギョリっていうようになった。


【消耗品】
・タイヤ
 3セット使った。全部純正サイズ(175/60R14)
 新車装着のピレリP4000(ちょっとグリップが弱かった) → ブリジストンGグリッド → ダンロップFM901
・ブレーキパッド
 40000qでフロントのブレーキパッドがなくなった。市街地の割合が少ない私の乗り方を考えると、結構磨耗が早いと思う。ブレーキダストも盛大に出る。


【リフレッシュ】
 64000q時に一度サスペンションをリフレッシュしてみた。
 ダンパー(モンロー)とストラットアッパーマウント(純正)を交換。
 外した純正ダンパーはスコスコだった。
 動きは引き締まったけど、上に書いたとおり、乗り心地は復活しなかった。


【売却へ】
 ある日、洗車のためにリアゲートを開けながら、ふと思った。
 人も荷物も載せない私にとってはこのクルマの後ろ半分のガラ―ンと空いたスペースが無意味なんじゃないか?
 考えてみると、買ってからリアゲートを開けた回数は10回位しか無いと思う。(ほとんど洗車の時)
 ということで、売却した。


【まとめ】
6年、75000qで手放してしまったけど、このクルマを買ったことは良かったと思う。
就職1年目の私にも何とか手が届く価格だったし、維持費が安くてトラブルも無く、結構楽しく乗れた。
本州ドライブにも何度も行ったし、九州遠征もした。

一番良かったのは、良くも悪しくも輸入車は特別なものではないということが分かったこと。
このクルマは、当時、自動車雑誌漬けだった私が持っていた、「輸入車に対する過大な幻想」「トラブル、維持費の不安」をどちらも払拭してくれた。

自動車雑誌の世界では、
・日本車はカタログスペックばかりで実用域のトルクが無い、かたや欧州車はカタログ上の数字は控えめだけど実用トルクが厚くて実際に乗ると速い。
・日本車はボディーが弱くてすぐにガタガタになるけど、欧州車はボディーが堅牢で耐久性がある。
・輸入車は楽しいけど、トラブルが多くて、修理代も高くて、維持するには手間とお金がかかる。
などという文章を良く見かけるけど、これらは全部ウソだ。

上に書いたように、欧州車だって表示馬力・トルク以上の加速はしない。欧州車だって乗り味(この言葉キライだけど他に良い表現を思いつかない)は落ちる。欧州車だからってむやみやたらと壊れない。

欧州車を崇拝して日本車を見下す人、逆にクルマは国産に限るといって欧州車を毛嫌いする人、どちらもクルマ選びの幅を自分で狭めていて、もったいないと思う。
クルマが好きなら、国産車、輸入車の枠にとらわれず、気に入ったクルマを買うのが一番だと思う。

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